オフィス出社vsリモート論争に終止符を。生産性を最大化する「働き方の最適解」の見つけ方
コラム

パンデミックを機に、多くの企業がリモートワークやハイブリッド勤務を取り入れている今、移動時間が減り集中できる環境を選べる一方で、対面での情報共有や意思決定のスピードを重視する声も根強く残っています。「結局、どの働き方が最も生産性が高いのか」という終わらない議論に頭を悩ませるマネージャーは少なくありません。
この記事は、単にオフィスとリモートのメリット・デメリットを並べるだけでなく、「生産性」そのものを多角的にみることで、あなたのチームにとっての「最適解」を導き出すための具体的な思考のフレームワークをご紹介します。
なぜ今も「オフィスかリモートか」が議論されるのか
この議論が続く背景には、テレワークの定着とオフィス回帰という二つの大きな潮流が存在します。
さらに、議論の根幹にある「生産性」という言葉の定義が、立場によって異なることが、対話をより複雑なものにしているのです。
2つの潮流、「テレワーク定着」と「オフィス回帰」
コロナ禍を機に急速に普及したテレワークは、今や働き方の選択肢として社会に根付きつつあります。
国土交通省の調査によれば、2024年時点での雇用型テレワーカーの割合は約24.6%で、一定数がこの働き方を継続している状況がうかがえます(※1)。
一方で、企業側からは組織の一体感やイノベーション創出の観点から、従業員にオフィスへの出社を促す「オフィス回帰」の動きも活発化しており、両者の間で最適なバランスを模索する状況が続いています。
「生産性」の定義のあいまいさが混乱のもと
「生産性」と一言でいっても、その捉え方は立場によって大きく異なります。
例えば、従業員個人にとっては、通勤時間がなくなることで生まれた時間を有効活用できること自体が「生産性向上」と認識されるでしょう。
しかし、経営層や管理職の視点では、チーム全体の連携から生まれるアイデアの創出や、組織文化の醸成といった、数値化しにくい要素を含めて「生産性」と捉えている場合が多く、この認識のズレが議論をすれ違わせる一因となっています。
集中ブースとオープンスペース:基本知識と比較ポイント

ここでは、リモートワークとオフィス勤務が「生産性」の異なる側面にどのような影響を与えるのかを客観的に比較します。それぞれの働き方が持つ特性を、具体的なデータとともに見ていきましょう。
個人の集中・処理効率はリモートが優位
個人のタスク効率という観点では、リモートワークに優位性があることを示すデータがあります。
国土交通省の調査によると、多くの人がテレワークの「よい影響」として、「通勤時間がなくなり、時間を有効活用できるため」や「業務の効率・生産性が上がるため」を挙げています(※1)。
周囲の雑音や割り込みが少ない環境は、集中力を要する個別の作業を進める上では、大きなメリットとなりうるようです。
偶発的な対話や連携はオフィス環境が有利
一方で、チーム全体の生産性を考えたとき、オフィス環境の価値も見直されています。
東京都の年度調査によれば、テレワークを導入している企業が感じる課題の第一位は「社内のコミュニケーションの減少」です(※2)。オフィスでの何気ない雑談や、通りすがりの相談といった偶発的なコミュニケーションが、新たなアイデアの着想や問題解決の糸口になることは少なくありません。
こうした機会の損失によって、組織全体の生産性や創造性を損なう可能性が懸念されます。
ハイブリッドワークが定着率・エンゲージメント向上に
生産性の向上には、個人やチームの作業効率だけでなく、優秀な人材を引き留め、モチベーション高く働ける環境づくりも欠かせません。スタンフォード大学の研究によると、週に数日出社するハイブリッドワークを導入したグループは、完全オフィス勤務のグループに比べて離職率が33%も低かったと報告されています(※3)。またGallup社の2024年の調査によれば、ハイブリッド勤務者のエンゲージメント率は35%と、完全オフィス勤務者(27%)を上回る結果に(※4)。こうした研究結果は、画一的な働き方を追求するのではなく、個人の集中とチームの協働という二つの側面を両立させ、従業員の定着率も高めるハイブリッドワークが、今後の生産性向上の一つのカギを握っていることを示唆しています。
【実践ガイド】自社に合った働き方を設計する3つの判断軸

画一的な正解がないからこそ、自分たちの組織に合った働き方をデザインするための「判断の軸」を持つことが重要になります。ここでは、自社にとっての最適解を導き出すために役立つ、3つの具体的な判断軸を提示します。
視点1 :業務内容に応じて「集中」と「協働」の最適な場所を選ぶ
まずは、日々の業務を「個人で集中して行う作業」と「複数人で協力して行う作業」に分解してみましょう。
例えば、プログラミングや資料作成といった集中を要するタスクはリモートで、複雑な意思決定や新しいアイデアを生むブレインストーミングはオフィスで、といったように業務の性質に合わせて場所を選ぶことで、全体の生産性は向上します。ただ場所を決めるのではなく、業務内容に応じて最適な環境を使い分けるという発想が第一歩です。
視点2 :職種・役割別に生産性が高まる働き方を設計する
全社一律のルールを設けるのではなく、職種や役割の特性に合わせて働き方の柔軟性を設計することも有効なアプローチです。
例えば、顧客訪問が多い営業職と、定型的な処理が多い経理職とでは、生産性が高まる働き方は自ずと異なります。それぞれの部署やチームが、自分たちの業務内容に最も適した働き方のモデルを自律的に考え、実践していくことが、組織全体のパフォーマンスを高める上で合理的と言えるでしょう。
視点3 :企業文化や事業フェーズによってオフィスの役割を再定義する
オフィスの価値は、企業の成長段階や目指す文化によっても変化します。
例えば、創業間もないスタートアップにとっては、メンバーが顔を合わせて一体感を醸成し、企業文化を築き上げる場としてオフィスは極めて重要な役割を果たします。
一方で、組織が成熟した企業では、オフィスは部署を超えた交流を促したり、新入社員への教育やメンタリングを行ったりする「文化継承の場」としての機能がより重要になるかもしれません。
生産性を高め続ける組織になるための3つの未来戦略

これまでの分析を踏まえ、最後に、未来志向でこれからの働き方をデザインしていくための戦略を3つ紹介します。
これらの視点は、持続的に生産性の高い組織を築く上で、きっと役立つはずです。
ヒント1 :オフィスは「毎日行く場所」から「目的を持って集まる場所」へ
これからのオフィスは、単にPC作業をするためだけの場所ではなくなります。チームでの協働、部門を超えた交流、そして企業文化の体感といった、そこでしか得られない体験価値を提供する「目的を持って集まる場所」へと役割が変化していくでしょう。
なぜ出社するのか、その目的を組織と個人が明確に共有すること。それが、オフィスという物理的な空間の価値を最大限に引き出すための鍵となります。
ヒント2 :柔軟な働き方の選択肢を人材獲得の武器にする
労働人口が減少していく日本において、優秀な人材の獲得と定着は企業の最重要課題です。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査では、柔軟な働き方が可能なことは、労働者の就業継続意向にも影響を与えることが示唆されています(※5)。
画一的な働き方を強いるのではなく、従業員が自身の業務やライフスタイルに合わせて働き方を選択できる制度を整えることは、もはや福利厚生ではなく、企業の競争力に直結する重要な経営戦略なのです。
ヒント3 :意図的に設計された「構造化ハイブリッドワーク」を導入
ただリモートと出社の日数を組み合わせるだけでは、ハイブリッドワークの効果は半減してしまいます。
重要なのは、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱するように、明確な出社目的をともなう“意図的に設計されたハイブリッド(構造化ハイブリッド)”です(※6)。
これは、例えば「チームでの共同作業のために火曜日は全員出社する」といったように、オフィスに出社する目的と活動を明確に定義するアプローチを指します。
これにより、オフィスでの時間が最大化され、組織全体の生産性向上につながります。
まとめ
オフィスかリモートか、という二元論で正解を探す時代は、すでに終わりを迎えつつあります。
重要なのは、データに基づいた客観的な視点と、自社の状況に合わせた思考のフレームワークを持つことです。
この記事で提示した視点が、あなたのチームや組織にとって最適な働き方を見つけ出し、生産性と創造性を両立させるための一助となれば幸いです。